農業の規模をくらべるとき、とれた量ではなく金額で見る方法があります。
これを農業産出額といい、生産量に販売価格を掛けて推計したものです。
実際にいくら売れたかではなく、その年の生産をお金に直すとどれくらいかを表します。
今回は47都道府県の農業産出額を、令和6年の農林水産省「生産農業所得統計」のデータを使って比べました。
都道府県別の農業産出額を合計すると10兆8,201億円。
1位と47位では65.6倍の開きがありました。
規模が大きいのはどこか、そしてその道県は何を作っているのかを順に見ていきます。
47都道府県の単純平均
2,302億円
農業産出額(令和6年(2024年))
最も多い 北海道
14,817億円
最も少ない 東京都
226億円
農業産出額が大きい5道県
農業産出額が大きい上位5道県です。
北海道は14,817億円、鹿児島県は5,689億円、茨城県は5,494億円、千葉県は4,533億円、青森県は4,119億円でした。
上位5道県を合計すると34,652億円で、全国の32.0パーセントを占めます。
北海道の14,817億円は2位の鹿児島県の2.6倍で、1道だけで全国の13.7パーセントにあたります。
6位以下は熊本県の4,116億円、宮崎県の3,725億円、愛知県の3,551億円、栃木県の3,448億円と続きました。
上位10道県の合計は52,761億円。
農業産出額のほぼ半分が10道県に集まっている計算になります。
5,000億円を超えたのは3道県、逆に1,000億円に届かなかった県が14ありました。
規模の大きい道県は何で稼いでいるのか
この分布の背景を、ここから考えてみます。
農業産出額の統計が答えを持っているわけではないので、以下はほかの数字と照らして立てた推測です。
産出額の大きい道県を部門別に見ると、性格が2つに分かれます。
ひとつは畜産型です。
北海道は畜産が8,399億円で全体の56.7パーセント、鹿児島県は3,622億円で63.7パーセント、宮崎県は2,344億円で62.9パーセントを占めます。
牛や豚、鶏は単価が高く、飼料を確保できれば土地の広さ以上に金額を積み上げられます。
もうひとつは野菜型です。
茨城県は野菜が1,958億円で35.6パーセント、熊本県は1,508億円で36.6パーセント、千葉県は1,430億円で31.5パーセントでした。
いずれも大消費地に近く、収穫から店頭までの距離が短い県です。
逆に、米の比率が高い県は総額が伸びにくいようです。
富山県は米が農業産出額の77.8パーセント、福井県は68.8パーセントを占めますが、産出額そのものは832億円と593億円にとどまります。
米は面積あたりの金額が野菜や畜産より小さいため、田んぼが広くても総額としては大きくなりにくいのだと考えられます。
ただし例外もあります。
新潟県は米の比率が66.7パーセントと高いのに、産出額は3,103億円で12位でした。
作付面積そのものが大きいためです。
つまり農業の規模が大きい道県とは、畜産に力を入れているか、大消費地の近くで野菜を作っているか、あるいは米づくりの面積が飛び抜けて大きいかのいずれかだと言えそうです。
農業産出額が小さい5都府県
農業産出額が小さい下位5都府県です。
東京都は226億円、大阪府は357億円、奈良県は475億円、福井県は593億円、石川県は617億円でした。
北海道の14,817億円と東京都の226億円では65.6倍の差があります。
下位に並んだのは、大都市そのものか、農地が限られる県です。
東京都と大阪府は市街地が県土の多くを占めます。
奈良県、福井県、石川県はいずれも平地が狭く、合計しても1,000億円に届きませんでした。
産出額が小さいことは、農業をしていないという意味ではありません。
東京都の226億円のうち130億円、57.5パーセントは野菜です。
大阪府も166億円で46.5パーセントを野菜が占めます。
農地が少ないぶん、単価の高い野菜に絞っているという読み方ができます。
1,000億円に届かなかった14県の内訳は、近畿4府県、北陸3県、中国3県、関東2都県、四国1県、そして沖縄県でした。
地方別に見る農業産出額
地方別に平均を出すと、差がはっきりします。
最も大きいのは北海道の14,817億円ですが、1道だけの数字なので他とは単純に比べられません。
県の集まりで見ると、東北6県が平均3,059億円で最も大きく、関東7都県が2,749億円、九州8県が2,669億円と続きます。
小さいほうは中部9県が1,885億円、中国5県が1,172億円、四国4県が1,162億円、近畿7府県が994億円でした。
最も大きい東北と最も小さい近畿では3.1倍の差があります。
東北が上位に来るのは、6県すべてが底堅いためです。
青森県4,119億円、岩手県3,269億円、山形県3,025億円、福島県2,874億円、秋田県2,572億円、宮城県2,494億円と、いずれも2,000億円を超えています。
地図で見る農業産出額
| 項目 | 農業産出額 |
|---|---|
| 北海道 | 14,817億円 |
| 青森県 | 4,119億円 |
| 岩手県 | 3,269億円 |
| 宮城県 | 2,494億円 |
| 秋田県 | 2,572億円 |
| 山形県 | 3,025億円 |
| 福島県 | 2,874億円 |
| 茨城県 | 5,494億円 |
| 栃木県 | 3,448億円 |
| 群馬県 | 2,868億円 |
| 埼玉県 | 1,929億円 |
| 千葉県 | 4,533億円 |
| 東京都 | 226億円 |
| 神奈川県 | 744億円 |
| 新潟県 | 3,103億円 |
| 富山県 | 832億円 |
| 石川県 | 617億円 |
| 福井県 | 593億円 |
| 山梨県 | 1,298億円 |
| 長野県 | 3,206億円 |
| 岐阜県 | 1,373億円 |
| 静岡県 | 2,396億円 |
| 愛知県 | 3,551億円 |
| 三重県 | 1,297億円 |
| 滋賀県 | 840億円 |
| 京都府 | 852億円 |
| 大阪府 | 357億円 |
| 兵庫県 | 1,850億円 |
| 奈良県 | 475億円 |
| 和歌山県 | 1,286億円 |
| 鳥取県 | 865億円 |
| 島根県 | 770億円 |
| 岡山県 | 1,887億円 |
| 広島県 | 1,540億円 |
| 山口県 | 797億円 |
| 徳島県 | 1,092億円 |
| 香川県 | 994億円 |
| 愛媛県 | 1,337億円 |
| 高知県 | 1,226億円 |
| 福岡県 | 2,301億円 |
| 佐賀県 | 1,372億円 |
| 長崎県 | 1,745億円 |
| 熊本県 | 4,116億円 |
| 大分県 | 1,498億円 |
| 宮崎県 | 3,725億円 |
| 鹿児島県 | 5,689億円 |
| 沖縄県 | 909億円 |
日本地図で見ると、色が濃く出るのは北海道と南九州、そして関東の北部です。
淡いのは近畿と北陸、そして大都市を抱える東京都と大阪府でした。
47都道府県の単純平均は2,302億円、中央値は1,540億円です。
平均を超えたのは18道県だけでした。
平均と中央値が760億円ほど離れているのは、上に大きく外れた道県があるためです。
真ん中あたりの県の実感に近いのは、中央値の1,540億円のほうだと言えます。
| 順位 | 都道府県 | 農業産出額(億円) | 地方 | 畜産の産出額 | 野菜の産出額 | 米の産出額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 北海道 | 14817 | 北海道 | 8399 | 2375 | 1841 |
| 2 | 鹿児島県 | 5689 | 九州 | 3622 | 704 | 336 |
| 3 | 茨城県 | 5494 | 関東 | 1286 | 1958 | 1399 |
| 4 | 千葉県 | 4533 | 関東 | 1464 | 1430 | 1005 |
| 5 | 青森県 | 4119 | 東北 | 1083 | 762 | 955 |
| 6 | 熊本県 | 4116 | 九州 | 1347 | 1508 | 545 |
| 7 | 宮崎県 | 3725 | 九州 | 2344 | 756 | 237 |
| 8 | 愛知県 | 3551 | 中部 | 985 | 1354 | 424 |
| 9 | 栃木県 | 3448 | 関東 | 1399 | 793 | 998 |
| 10 | 岩手県 | 3269 | 東北 | 1864 | 294 | 873 |
| 11 | 長野県 | 3206 | 中部 | 280 | 1026 | 635 |
| 12 | 新潟県 | 3103 | 中部 | 471 | 364 | 2069 |
| 13 | 山形県 | 3025 | 東北 | 440 | 436 | 1311 |
| 14 | 福島県 | 2874 | 東北 | 510 | 541 | 1324 |
| 15 | 群馬県 | 2868 | 関東 | 1327 | 1042 | 273 |
| 16 | 秋田県 | 2572 | 東北 | 438 | 322 | 1652 |
| 17 | 宮城県 | 2494 | 東北 | 774 | 321 | 1309 |
| 18 | 静岡県 | 2396 | 中部 | 605 | 689 | 269 |
| 19 | 福岡県 | 2301 | 九州 | 373 | 807 | 536 |
| 20 | 埼玉県 | 1929 | 関東 | 250 | 872 | 528 |
| 21 | 岡山県 | 1887 | 中国 | 780 | 277 | 481 |
| 22 | 兵庫県 | 1850 | 近畿 | 656 | 444 | 627 |
| 23 | 長崎県 | 1745 | 九州 | 601 | 556 | 163 |
| 24 | 広島県 | 1540 | 中国 | 633 | 308 | 377 |
| 25 | 大分県 | 1498 | 九州 | 484 | 438 | 316 |
| 26 | 岐阜県 | 1373 | 中部 | 459 | 442 | 333 |
| 27 | 佐賀県 | 1372 | 九州 | 368 | 371 | 333 |
| 28 | 愛媛県 | 1337 | 四国 | 290 | 226 | 215 |
| 29 | 山梨県 | 1298 | 中部 | 87 | 145 | 82 |
| 30 | 三重県 | 1297 | 近畿 | 545 | 159 | 377 |
| 31 | 和歌山県 | 1286 | 近畿 | 36 | 138 | 96 |
| 32 | 高知県 | 1226 | 四国 | 91 | 758 | 162 |
| 33 | 徳島県 | 1092 | 四国 | 282 | 429 | 162 |
| 34 | 香川県 | 994 | 四国 | 412 | 304 | 162 |
| 35 | 沖縄県 | 909 | 九州 | 367 | 155 | 5 |
| 36 | 鳥取県 | 865 | 中国 | 328 | 219 | 206 |
| 37 | 京都府 | 852 | 近畿 | 156 | 299 | 246 |
| 38 | 滋賀県 | 840 | 近畿 | 114 | 128 | 535 |
| 39 | 富山県 | 832 | 中部 | 78 | 57 | 647 |
| 40 | 山口県 | 797 | 中国 | 220 | 184 | 284 |
| 41 | 島根県 | 770 | 中国 | 292 | 143 | 258 |
| 42 | 神奈川県 | 744 | 関東 | 160 | 381 | 46 |
| 43 | 石川県 | 617 | 中部 | 78 | 93 | 390 |
| 44 | 福井県 | 593 | 中部 | 60 | 86 | 408 |
| 45 | 奈良県 | 475 | 近畿 | 61 | 122 | 137 |
| 46 | 大阪府 | 357 | 近畿 | 18 | 166 | 72 |
| 47 | 東京都 | 226 | 関東 | 17 | 130 | 1 |
このグラフについての豆知識
全国の合計と都道府県の合計は一致しない
農林水産省が公表している令和6年の農業総産出額は10兆7,801億円です。
一方、47都道府県の数字を足すと10兆8,201億円になり、400億円ほど多くなります。
これは誤差ではありません。
ある県で生まれた子牛を別の県が買って育てる、といった県をまたぐ取引があると、都道府県別ではどちらにも計上されます。
全国の数字はその重複を差し引いているため、都道府県の単純合計より小さくなります。
この記事では都道府県を比べることが目的なので、合計も都道府県別の数字を足したものを使っています。
令和6年は米の産出額が7割近く伸びた
令和6年の農業総産出額は前年より1兆2,923億円、13.6パーセント増えました。
伸びの多くは米によるものです。
米の産出額は前年比で1兆331億円、68.0パーセント増の2兆5,524億円となりました。
米の価格が大きく動いた年だったため、米の比率が高い県ほどこの1年で産出額が伸びています。
ランキングを見るときは、これが令和6年という特定の年の姿である点に気をつけてください。
産出額は生産量に販売価格を掛けて推計した数字です。
同じ量を作っても、価格が上がれば産出額は増えます。
順位の並びがにている記事
この農業産出額の並びに近い記事を、全記事の順位から機械で洗い出しました。
0.89という高い相関を示したのが【販売農家の数】全国102万戸、人口あたりでは87倍の差でした。
逆に、ほぼ裏返しの並びになったのが【ぶりへの支出】平均年3,023円、年取り魚の東西(相関-0.6)でした。
似ているからといって理由が同じとはかぎりません。
それでも、2つを重ねると土地の性格が見えてくることがあります。
地方のなかで見た農業産出額
| 地方 | 最も多い(億円) | 最も少ない(億円) |
|---|---|---|
| 東北 | 青森県 4119 | 宮城県 2494 |
| 関東 | 茨城県 5494 | 東京都 226 |
| 中部 | 愛知県 3551 | 福井県 593 |
| 近畿 | 兵庫県 1850 | 大阪府 357 |
| 中国 | 岡山県 1887 | 島根県 770 |
| 四国 | 愛媛県 1337 | 香川県 994 |
| 九州 | 鹿児島県 5689 | 沖縄県 909 |
まとめ
47都道府県の農業産出額を比べると、最も大きい北海道は14,817億円、最も小さい東京都は226億円で、その差は65.6倍でした。
都道府県別の合計は10兆8,201億円、上位5道県だけで32.0パーセント、上位10道県では48.8パーセントを占めます。
農業産出額の数字には、但し書きが3つつきます。
1つ目は、産出額が生産量に販売価格を掛けて推計した数字であること。
2つ目は、都道府県の合計が全国の農業総産出額と一致しないこと。
3つ目は、米価が大きく動いた令和6年(2024年)の数字であることです。
規模の大きい道県は、畜産中心の道県と、大消費地の近くで野菜を作る県に分かれていました。
米の比率が高い県は、田んぼが広くても金額としては伸びにくくなります。
農業の規模を1本の数字で見ると北海道が突出しますが、部門別に分けると県ごとの成り立ちが見えてきます。
野菜や果物の産出額を比べた記事とあわせて読むと、その違いがよりはっきりします。
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出典
- 統計名: 生産農業所得統計(都道府県別農業産出額及び生産農業所得)
- 調査年: 令和6年(2024年)
- 公開元: 農林水産省
- 参照URL: https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040426672
- 備考: 農業産出額は生産量に販売価格を掛けて推計したもので、実際の販売額とは異なる。畜産・野菜・米は部門別の内訳
- 考察の参照: 令和6年農業総産出額及び生産農業所得(全国)(農林水産省)(https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/seisan_shotoku/r6_zenkoku/index.html)
注記: 農業産出額は生産量に販売価格を掛けて推計したもので、実際の販売額とは異なる。
畜産・野菜・米は部門別の内訳
