通勤や通学でバスを使う人は、鉄道や自家用車にくらべると多くありません。
ただし県ごとの差は15倍を超え、交通手段のなかでも開きの大きい項目です。
ここでいう乗合バスには路線バスとコミュニティバスが入り、勤め先や学校の送迎バスは別に数えられています。
今回は47都道府県の乗合バスを使う人の割合を、令和2年の総務省統計局「国勢調査」のデータを使って比べました。
利用交通手段は複数回答のため、すべての手段を足すと100%を超えます。
全国では通勤者・通学者の6.81%。
鉄道の25.50%、自家用車の49.54%に比べると小さい数字ですが、県ごとの差は15.67倍と大きく開きました。
47都道府県の単純平均
4.7%
乗合バスを使う人の割合(令和2年(2020年10月1日現在))
最も多い 神奈川県
16.1%
最も少ない 群馬県
1.0%
バスで通う人が多い5都道府県
バスで通う人が多い上位5都道府県です。
神奈川県は16.14パーセント、長崎県は12.34パーセント、東京都は10.41パーセント、京都府は10.40パーセント、福岡県は9.97パーセントでした。
神奈川県と最下位の群馬県では15.67倍の差があります。
6位以下は北海道と兵庫県が8.95パーセント、千葉県8.67パーセントと続きます。
10パーセントを超えたのは4都県だけでした。
長崎県が2位に入るのが目を引きます。
長崎県の鉄道利用は5.27パーセントで30位と低く、バスだけが突出して高い県です。
バスが多いのは、鉄道がある県のほう
この分布の背景を、ここから考えてみます。
通勤・通学に乗合バスを使う人の割合の統計が答えを持っているわけではないので、以下はほかの数字と照らして立てた推測です。
バスは鉄道の代わりになるもの、と考えたくなります。
ところが数字は逆でした。
鉄道・電車を使う人の割合との相関係数はプラス0.72。
バスが多い県ほど鉄道も多いという関係です。
自家用車との相関係数はマイナス0.79。
人口集中地区に住む人の割合とはプラス0.78でした。
つまりバスが使われているのは、鉄道が通っていない地方ではなく、まちがまとまっていて公共交通が成り立つ地域のほうだということになります。
神奈川県の16.14パーセントは、鉄道52.06パーセントで全国2位という県の数字です。
駅までの足としてバスが使われている、いわゆるフィーダー輸送の形が見えます。
例外が長崎県です。
バス12.34パーセントで2位ですが、鉄道は5.27パーセントで30位、自家用車は62.09パーセントで33位。
自転車にいたっては3.13パーセントで全国最下位でした。
坂の多い地形で自転車が使いにくく、鉄道網も限られる。
その隙間をバスが埋めていると考えられます。
最下位の群馬県1.03パーセントは、自家用車77.65パーセントで全国6位という県です。
四国4県の平均1.48パーセントも同じ構図で、車社会になった地域ではバスの出番がほとんどありません。
勤め先・学校のバスは全国1.20パーセントと別に集計されています。
こちらを足しても、順位の傾向は大きくは変わりません。
バスで通う人が少ない5県
バスで通う人が少ない下位5県です。
群馬県は1.03パーセント、香川県は1.30パーセント、山形県は1.33パーセント、徳島県は1.37パーセント、山梨県は1.41パーセントでした。
神奈川県の16.14パーセントとは15.67倍の差があります。
下位5県はいずれも自家用車の割合が高い県です。
群馬県は77.65パーセントで全国6位、山形県は80.93パーセントで全国1位でした。
2パーセントを下回ったのは10県。
北関東、東北、四国、山梨県に散らばっています。
四国4県は徳島県1.37パーセント、香川県1.30パーセント、愛媛県1.69パーセント、高知県1.57パーセントと、4県すべてが2パーセントを下回りました。
地図で見るバス利用の割合
| 項目 | 乗合バスを使う人の割合 |
|---|---|
| 北海道 | 9.0% |
| 青森県 | 4.3% |
| 岩手県 | 4.0% |
| 宮城県 | 6.8% |
| 秋田県 | 2.4% |
| 山形県 | 1.3% |
| 福島県 | 2.5% |
| 茨城県 | 3.3% |
| 栃木県 | 2.2% |
| 群馬県 | 1.0% |
| 埼玉県 | 7.3% |
| 千葉県 | 8.7% |
| 東京都 | 10.4% |
| 神奈川県 | 16.1% |
| 新潟県 | 4.3% |
| 富山県 | 1.9% |
| 石川県 | 5.6% |
| 福井県 | 1.6% |
| 山梨県 | 1.4% |
| 長野県 | 1.7% |
| 岐阜県 | 3.4% |
| 静岡県 | 4.0% |
| 愛知県 | 4.6% |
| 三重県 | 2.9% |
| 滋賀県 | 4.3% |
| 京都府 | 10.4% |
| 大阪府 | 6% |
| 兵庫県 | 9.0% |
| 奈良県 | 7.4% |
| 和歌山県 | 2.2% |
| 鳥取県 | 2.0% |
| 島根県 | 2.3% |
| 岡山県 | 2.8% |
| 広島県 | 8.2% |
| 山口県 | 2.8% |
| 徳島県 | 1.4% |
| 香川県 | 1.3% |
| 愛媛県 | 1.7% |
| 高知県 | 1.6% |
| 福岡県 | 10.0% |
| 佐賀県 | 2.2% |
| 長崎県 | 12.3% |
| 熊本県 | 4.2% |
| 大分県 | 3.2% |
| 宮崎県 | 2.1% |
| 鹿児島県 | 4.6% |
| 沖縄県 | 6.1% |
日本地図で見ると、色が濃く出るのは首都圏と京都府、福岡県、長崎県、北海道です。
淡いのは北関東と甲信、四国、東北の一部でした。
47都道府県の単純平均は4.65パーセント、中央値は3.40パーセントです。
平均が中央値を大きく上回るのは、上位の都府県が外れているためです。
10パーセントを超えたのは4都県、2パーセントを下回ったのは10県。
下位に厚みのある分布でした。
| 順位 | 都道府県 | 乗合バスを使う人の割合(%) | 地方 | 勤め先・学校のバス | 鉄道・電車 | 自家用車 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 神奈川県 | 16.14 | 関東 | 1.28 | 52.06 | 20.99 |
| 2 | 長崎県 | 12.34 | 九州 | 1.6 | 5.27 | 62.09 |
| 3 | 東京都 | 10.41 | 関東 | 0.86 | 60.11 | 10.16 |
| 4 | 京都府 | 10.4 | 近畿 | 1.08 | 28.99 | 32.68 |
| 5 | 福岡県 | 9.97 | 九州 | 0.77 | 18.42 | 52.57 |
| 6 | 兵庫県 | 8.95 | 近畿 | 1.27 | 34.1 | 38.72 |
| 6 | 北海道 | 8.95 | 北海道 | 1.96 | 15.34 | 57.0 |
| 8 | 千葉県 | 8.67 | 関東 | 1.77 | 42.16 | 37.57 |
| 9 | 広島県 | 8.16 | 中国 | 1.2 | 13.3 | 52.28 |
| 10 | 奈良県 | 7.42 | 近畿 | 1.0 | 35.67 | 45.05 |
| 11 | 埼玉県 | 7.32 | 関東 | 1.58 | 39.82 | 36.07 |
| 12 | 宮城県 | 6.75 | 東北 | 1.07 | 17.19 | 60.48 |
| 13 | 沖縄県 | 6.09 | 九州 | 1.13 | 2.12 | 69.47 |
| 14 | 大阪府 | 6.0 | 近畿 | 1.1 | 41.93 | 20.92 |
| 15 | 石川県 | 5.6 | 中部 | 1.14 | 4.67 | 74.53 |
| 16 | 愛知県 | 4.63 | 中部 | 1.48 | 22.37 | 55.45 |
| 17 | 鹿児島県 | 4.61 | 九州 | 1.84 | 4.5 | 70.45 |
| 18 | 新潟県 | 4.26 | 中部 | 1.01 | 5.73 | 76.5 |
| 19 | 滋賀県 | 4.25 | 近畿 | 1.35 | 20.18 | 60.93 |
| 19 | 青森県 | 4.25 | 東北 | 2.36 | 2.82 | 74.5 |
| 21 | 熊本県 | 4.16 | 九州 | 0.77 | 4.56 | 70.26 |
| 22 | 静岡県 | 4.04 | 中部 | 1.03 | 8.18 | 68.55 |
| 23 | 岩手県 | 3.95 | 東北 | 1.59 | 4.5 | 75.85 |
| 24 | 岐阜県 | 3.4 | 中部 | 1.21 | 9.58 | 74.0 |
| 25 | 茨城県 | 3.28 | 関東 | 1.25 | 11.35 | 72.95 |
| 26 | 大分県 | 3.22 | 九州 | 0.94 | 4.2 | 72.9 |
| 27 | 三重県 | 2.88 | 近畿 | 1.19 | 10.97 | 72.16 |
| 28 | 山口県 | 2.81 | 中国 | 0.8 | 5.43 | 72.8 |
| 29 | 岡山県 | 2.77 | 中国 | 0.72 | 7.56 | 68.6 |
| 30 | 福島県 | 2.53 | 東北 | 1.09 | 4.63 | 77.72 |
| 31 | 秋田県 | 2.42 | 東北 | 0.82 | 3.29 | 80.67 |
| 32 | 島根県 | 2.3 | 中国 | 1.13 | 2.22 | 77.01 |
| 33 | 栃木県 | 2.22 | 関東 | 1.17 | 7.32 | 75.88 |
| 34 | 和歌山県 | 2.21 | 近畿 | 0.83 | 9.21 | 66.35 |
| 35 | 佐賀県 | 2.16 | 九州 | 1.17 | 5.77 | 75.7 |
| 36 | 宮崎県 | 2.13 | 九州 | 0.93 | 1.84 | 76.68 |
| 37 | 鳥取県 | 2.03 | 中国 | 0.95 | 3.67 | 76.82 |
| 38 | 富山県 | 1.89 | 中部 | 0.59 | 6.29 | 79.88 |
| 39 | 長野県 | 1.73 | 中部 | 0.55 | 6.47 | 76.11 |
| 40 | 愛媛県 | 1.69 | 四国 | 0.73 | 4.2 | 62.62 |
| 41 | 福井県 | 1.59 | 中部 | 2.08 | 4.15 | 79.01 |
| 42 | 高知県 | 1.57 | 四国 | 0.85 | 3.79 | 66.97 |
| 43 | 山梨県 | 1.41 | 中部 | 0.88 | 6.11 | 75.37 |
| 44 | 徳島県 | 1.37 | 四国 | 0.64 | 3.19 | 74.03 |
| 45 | 山形県 | 1.33 | 東北 | 0.93 | 3.19 | 80.93 |
| 46 | 香川県 | 1.3 | 四国 | 0.57 | 7.07 | 69.3 |
| 47 | 群馬県 | 1.03 | 関東 | 0.93 | 6.1 | 77.65 |
このグラフについての豆知識
複数回答である
国勢調査の利用交通手段は複数回答です。
駅までバス、そこから電車という人は、バスと鉄道の両方に数えられます。
そのため、すべての手段の割合を足すと100パーセントを超えます。
全国では鉄道25.50パーセント、自家用車49.54パーセント、自転車14.24パーセント、徒歩のみ7.00パーセント、乗合バス6.81パーセントなどの合計です。
この記事の割合は「バスを使う人の割合」であって、「バスだけで通う人の割合」ではありません。
勤め先・学校のバスは別区分
乗合バスには路線バスとコミュニティバスが含まれます。
会社や学校が用意した送迎バスは「勤め先・学校のバス」という別の区分で、全国1.20パーセントです。
観光バスや高速バスは、通勤・通学に使われることが少ないため実質的にはほとんど含まれません。
数字は令和2年、2020年10月1日現在のものです。
順位の並びがにている記事
同じ形の地図になる記事はあるでしょうか。
通勤・通学に乗合バスを使う人の割合の順位で探してみます。
0.9という高い相関を示したのが【バスに乗った人】年間40億1,530万人、人口あたりでは11.2倍でした。
逆に、ほぼ裏返しの並びになったのが【自動車保険料】平均年4万1,307円、車を持つ固定費(相関-0.77)でした。
順位が近いことと、原因がつながっていることは別の話です。
それでも、見くらべると気づくことがあります。
地方のなかで見た乗合バスを使う人の割合
| 地方 | 最も多い(%) | 最も少ない(%) |
|---|---|---|
| 東北 | 宮城県 6.75 | 山形県 1.33 |
| 関東 | 神奈川県 16.14 | 群馬県 1.03 |
| 中部 | 石川県 5.6 | 山梨県 1.41 |
| 近畿 | 京都府 10.4 | 和歌山県 2.21 |
| 中国 | 広島県 8.16 | 鳥取県 2.03 |
| 四国 | 愛媛県 1.69 | 香川県 1.3 |
| 九州 | 長崎県 12.34 | 宮崎県 2.13 |
まとめ
通勤・通学に乗合バスを使う人の割合を比べると、最も高い神奈川県は16.14パーセント、最も低い群馬県は1.03パーセントで、その差は15.67倍でした。
全国では6.81パーセントです。
通勤・通学に乗合バスを使う人の割合の統計を読むときの注意点は3つです。
1つ目は、複数回答のためすべての手段を足すと100パーセントを超えること。
2つ目は、勤め先・学校のバスは別の区分であること。
3つ目は令和2年10月1日現在の数字であることです。
鉄道との相関係数はプラス0.72、自家用車とはマイナス0.79。
バスが使われているのは鉄道のない地方ではなく、公共交通が成り立つ地域のほうでした。
例外は長崎県です。
バス2位、鉄道30位、自転車は全国最下位。
坂の多い地形が数字に表れています。
鉄道や自家用車の通勤を比べた記事とあわせて読んでみてください。
関連記事
- 【徒歩通勤・通学の割合】全国7.0%、大都市と地方の両方が上位に来るという珍しい並び
- 【私鉄の輸送人員】年間142億人、上位3都府県で7割近く
- 【バスに乗った人】年間40億1,530万人、人口あたりでは11.2倍
- 【定期の路線バス利用】全国11億人、実数で261.7倍の違い
- 【通勤30〜45分の世帯】全国355万3,600世帯、差は47.4倍
- 【バス運転者の平均月給】全国23.4万円、路線を守れるか
出典
- 統計名: 国勢調査(従業地・通学地による人口・就業状態等集計 第18表)
- 調査年: 令和2年(2020年10月1日現在)
- 公開元: 総務省統計局
- 参照URL: https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000032214691
- 備考: 利用交通手段は複数回答のため、すべての手段の割合を足すと100%を超える。分母は15歳以上の通勤者・通学者で、常住地ベース。乗合バスには路線バスとコミュニティバスを含み、勤め先・学校のバスは別の区分
注記: 利用交通手段は複数回答のため、すべての手段の割合を足すと100%を超える。
分母は15歳以上の通勤者・通学者で、常住地ベース。
乗合バスには路線バスとコミュニティバスを含み、勤め先・学校のバスは別の区分
