普段何気なく目にしている住所の中の「市」「町」「村」。
全国には合わせて1,741の自治体(市町村)が存在します。
一見すると「市 > 町 > 村」のように大きさや格付けの順番で分かれているように思えますが、実は行政上の立場に上下関係はありません。
では、この3つは一体何が違うのでしょうか。
制度上の決定的なルールの違いと、都道府県ごとの1自治体あたりの規模の違いを分かりやすく解説します。
市・町・村の決定的な違いとは?
市・町・村はすべて「基礎的自治体」と呼ばれ、住民票の発行、ゴミ処理、小中学校の運営など、住民の暮らしに直結する仕事の範囲は基本的に同じです。
都道府県との役割分担は都道府県と市区町村は何が違うのかに書きました。
いちばん大きな違いは、「その名前を名乗るための指定条件の決め方」にあります。
| 区分 | 指定の条件 | 主な基準 |
|---|---|---|
| 市 | 地方自治法(全国共通) | 原則として人口5万人以上など ※合併特例法では一時的に「3万人以上」のケースもあり |
| 町 | 都道府県の条例(地域ごとに異なる) | 各都道府県が独自に人口や街並みの要件を設定 ※そのため全国一律の基準は存在しない |
| 村 | 明確な規定なし | 市や町の条件を満たさない自治体 |
ここがポイント
- 「市」の条件は全国一律:国(地方自治法)が定めた人口5万人以上などのハードルをクリアする必要があります
- 「町」の条件は県によってバラバラ:都道府県が独自にルールを決めるため、同じ人口規模・街並みであっても、A県では「町」になれてもB県では「村」のままということが起こります
いまある市が、すべて同じ条件で生まれたわけでもありません。
合併の特例で3万人以上で市になった自治体と、それ以前からの市では、通ってきた基準がちがいます。
都道府県別:1自治体あたりの人口差は「14.5倍」
全国の人口を1,741市町村で割ると、1自治体あたりの平均人口は約71,110人です。
しかし、都道府県ごとの平均を見てみると、同じ「市町村」という単位でありながら、背負っている人口規模に極めて大きな格差が存在します。
1市町村あたりの人口が多い県・少ない県
| 順位 | 都道府県 | 1市町村あたりの人口 | 市町村数 | 県の総人口 | 地方 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | 神奈川県 | 279,545人 | 33 | 922.5万人 | 関東 |
| 2位 | 東京都 | 228,677人 | 62 | 1,417.8万人 | 関東 |
| 3位 | 大阪府 | 203,651人 | 43 | 875.7万人 | 近畿 |
| … | … | … | … | … | … |
| 45位 | 鳥取県 | 27,947人 | 19 | 53.1万人 | 中国 |
| 46位 | 長野県 | 25,805人 | 77 | 198.7万人 | 中部 |
| 47位 | 高知県 | 19,294人 | 34 | 65.6万人 | 四国 |
最も多い神奈川県(約28.0万人)と、最も少ない高知県(約1.9万人)を比べると、なんと14.5倍もの開きがあります。
同じ「市町村」という言葉でも、神奈川県のそれと高知県のそれでは、受け持つ人の数がまるでちがうということです。
地方ごとの特徴:自治体の数と人口バランス
この自治体あたりの規模の違いは、8つの地方単位でまとめてみても顕著に表れます。
| 地方 | 県の数 | 市町村の数 | 総人口 | 1市町村あたりの平均人口 |
|---|---|---|---|---|
| 関東 | 7 | 316 | 4,356.7万人 | 137,870人 |
| 近畿 | 7 | 227 | 2,189.2万人 | 96,441人 |
| 中国 | 5 | 107 | 699.9万人 | 65,411人 |
| 中部 | 9 | 316 | 2,061.4万人 | 65,234人 |
| 九州・沖縄 | 8 | 274 | 1,394.5万人 | 50,894人 |
| 四国 | 4 | 95 | 353.4万人 | 37,200人 |
| 東北 | 6 | 227 | 820.9万人 | 36,163人 |
| 北海道 | 1 | 179 | 504.3万人 | 28,173人 |
関東地方では1自治体あたり平均13.8万人以上の規模をカバーしているのに対し、広大な面積を持つ北海道では平均2.8万人程度にとどまり、約4.9倍の開きが生じています。
市町村の「数」そのものも、179から15までひらく
1自治体あたりの人口は、市町村の数で決まります。
では、その数はどれくらいちがうのでしょうか。
| 都道府県 | 市町村の数 | 人口 | |
|---|---|---|---|
| 多い | 北海道 | 179 | 504.3万人 |
| 多い | 長野県 | 77 | 198.7万人 |
| 多い | 埼玉県 | 63 | 733.2万人 |
| 少ない | 福井県 | 17 | 73.9万人 |
| 少ない | 香川県 | 17 | 91.7万人 |
| 少ない | 富山県 | 15 | 99.7万人 |
北海道には179の市町村があります。
富山県は15。
11.9倍です。
県は市町村どうしの連絡調整もする立場なので、向き合う相手の数がこれだけちがうと、仕事の形も変わってきます。
大きな市が県の仕事を引き受ける政令指定都市のしくみも、そのひとつの答えです。
【一覧表】47都道府県の「1市町村あたりの人口」ランキング
各都道府県の市町村数と、1自治体あたりの平均人口の全データを上位順に掲載します。
| 順位 | 都道府県 | 1市町村あたりの人口 | 市町村数 | 総人口 | 地方 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 神奈川県 | 279,545人 | 33 | 922.5万人 | 関東 |
| 2 | 東京都 | 228,677人 | 62 | 1,417.8万人 | 関東 |
| 3 | 大阪府 | 203,651人 | 43 | 875.7万人 | 近畿 |
| 4 | 愛知県 | 138,148人 | 54 | 746.0万人 | 中部 |
| 5 | 兵庫県 | 130,171人 | 41 | 533.7万人 | 近畿 |
| 6 | 広島県 | 118,000人 | 23 | 271.4万人 | 中国 |
| 7 | 埼玉県 | 116,381人 | 63 | 733.2万人 | 関東 |
| 8 | 千葉県 | 115,759人 | 54 | 625.1万人 | 関東 |
| 9 | 静岡県 | 100,771人 | 35 | 352.7万人 | 中部 |
| 10 | 京都府 | 96,923人 | 26 | 252.0万人 | 近畿 |
| 11 | 福岡県 | 84,867人 | 60 | 509.2万人 | 九州・沖縄 |
| 12 | 栃木県 | 75,400人 | 25 | 188.5万人 | 関東 |
| 13 | 滋賀県 | 73,789人 | 19 | 140.2万人 | 近畿 |
| 14 | 新潟県 | 69,967人 | 30 | 209.9万人 | 中部 |
| 15 | 岡山県 | 67,815人 | 27 | 183.1万人 | 中国 |
| 16 | 山口県 | 67,421人 | 19 | 128.1万人 | 中国 |
| 17 | 富山県 | 66,467人 | 15 | 99.7万人 | 中部 |
| 18 | 宮城県 | 64,229人 | 35 | 224.8万人 | 東北 |
| 19 | 愛媛県 | 63,800人 | 20 | 127.6万人 | 四国 |
| 20 | 茨城県 | 63,773人 | 44 | 280.6万人 | 関東 |
| 21 | 大分県 | 60,278人 | 18 | 108.5万人 | 九州・沖縄 |
| 22 | 長崎県 | 59,619人 | 21 | 125.2万人 | 九州・沖縄 |
| 23 | 三重県 | 59,000人 | 29 | 171.1万人 | 近畿 |
| 24 | 石川県 | 57,789人 | 19 | 109.8万人 | 中部 |
| 25 | 群馬県 | 54,000人 | 35 | 189.0万人 | 関東 |
| 26 | 香川県 | 53,941人 | 17 | 91.7万人 | 四国 |
| 27 | 岐阜県 | 45,619人 | 42 | 191.6万人 | 中部 |
| 28 | 福井県 | 43,471人 | 17 | 73.9万人 | 中部 |
| 29 | 宮崎県 | 39,731人 | 26 | 103.3万人 | 九州・沖縄 |
| 30 | 佐賀県 | 39,400人 | 20 | 78.8万人 | 九州・沖縄 |
| 31 | 熊本県 | 37,711人 | 45 | 169.7万人 | 九州・沖縄 |
| 32 | 秋田県 | 35,880人 | 25 | 89.7万人 | 東北 |
| 33 | 沖縄県 | 35,756人 | 41 | 146.6万人 | 九州・沖縄 |
| 34 | 鹿児島県 | 35,628人 | 43 | 153.2万人 | 九州・沖縄 |
| 35 | 岩手県 | 34,697人 | 33 | 114.5万人 | 東北 |
| 36 | 島根県 | 33,789人 | 19 | 64.2万人 | 中国 |
| 37 | 奈良県 | 32,949人 | 39 | 128.5万人 | 近畿 |
| 38 | 福島県 | 29,542人 | 59 | 174.3万人 | 東北 |
| 39 | 和歌山県 | 29,333人 | 30 | 88.0万人 | 近畿 |
| 40 | 山梨県 | 29,296人 | 27 | 79.1万人 | 中部 |
| 41 | 青森県 | 29,125人 | 40 | 116.5万人 | 東北 |
| 42 | 山形県 | 28,886人 | 35 | 101.1万人 | 東北 |
| 43 | 徳島県 | 28,542人 | 24 | 68.5万人 | 四国 |
| 44 | 北海道 | 28,173人 | 179 | 504.3万人 | 北海道 |
| 45 | 鳥取県 | 27,947人 | 19 | 53.1万人 | 中国 |
| 46 | 長野県 | 25,805人 | 77 | 198.7万人 | 中部 |
| 47 | 高知県 | 19,294人 | 34 | 65.6万人 | 四国 |
上のほうには大都市のある県、下のほうには市町村の数が多い県が並びます。
人口が多いから1市町村あたりも多い、とはかぎりません。
よくある疑問(Q&A)
- 人口が減って5万人を割った市は「町」に戻るのですか?
-
いいえ、戻りません。
「人口5万人以上」というのは、あくまで市に昇格する(市制を敷く)時点での基準です。
市になった後に少子化や過疎化で5万人を下回っても、自動的に「町」へ格下げされるような制度はありません。 - 「町」や「村」の読み方は全国で決まっていますか?
-
各自治体が個別に定めています。
町は「まち」「ちょう」、村は「むら」「そん」など読み方は自治体によって異なります。
東日本・西日本の傾向はありつつ、最終的には自治体ごとの決定に委ねられています。
統計の表では漢字だけが並ぶので、読み方までは分かりません。 - 市町村の数は、これからも減りますか?
-
この統計からは分かりません。
過去には合併で大きく減った時期がありました。
いまの1,741という数は、その結果として残った形です。
今後どうなるかは、それぞれの自治体の判断によります。 - 政令指定都市や中核市は、市とは別のものですか?
-
別のものではありません。
どれも市で、そのうえで担当する仕事の範囲が上乗せされています(政令指定都市とは?)。
「市・町・村」という区分と、「政令指定都市・中核市」という区分は、別の軸だと考えると整理しやすくなります。
まとめ
- 地位の違いはない:市・町・村はすべて対等な「基礎的自治体」
- 指定条件の違い:「市」は全国一律(原則5万人以上)だが、「町」の条件は各都道府県の条例ごとに異なる
- 規模の差:1自治体あたりの人口は、神奈川県(約28.0万人)と高知県(約1.9万人)で14.5倍の差がある
- 数の差:市町村の数そのものも北海道179から富山県15まで11.9倍ひらく
一見同じ「市町村」という分類であっても、制度の成り立ちや抱える地域規模の実態には多様な違いが存在しています。
出典
- e-Gov法令検索「地方自治法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000067 - 総務省「地方公共団体の区分」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/bunken/chihou-koukyoudantai_kubun.html - 総務省統計局「社会・人口統計体系(都道府県データ 基礎データ)」市町村数(2024年)
https://www.e-stat.go.jp/regional-statistics/ssdsview/prefectures - 総務省統計局「人口推計」(2024年10月1日現在)
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2024np/index.html
- 1市町村あたりの人口と倍率は、上記の公表値をもとに当サイトで計算した
