都道府県と市区町村の違いとは?役割と、動くお金の大きさで比べました

住所を書くときに「〇〇県〇〇市」と並べて書く「都道府県」と「市区町村」。
どちらも同じ自治体(地方公共団体)ですが、行っている仕事(役割)は明確に違います。

ざっくり言えば、都道府県は「広域的な仕事」、市区町村は「暮らしに直接関わる仕事」を担当しています。

「じゃあ、どちらの組織のほうが規模が大きいの?」という疑問について、年間で使われている「お金(歳出額)」を比較してみたところ、実は市区町村のほうが大きいという意外なデータが見えてきました。

この記事では、両者の役割の違いから、動いているお金のリアルまでを分かりやすく解説します。

役割の違い:「広い範囲」の都道府県と、「暮らしの近く」の市区町村

地方自治法において、自治体は次のように役割分担されています。

  • 市区町村(基礎的自治体):住民の暮らしに密着した、原則すべての事務を担当する
  • 都道府県(広域的自治体):複数の市区町村にまたがる「広域業務」や「連絡調整」、規模が大きすぎる仕事を補完する

主な役割分担の例

区分主な担当業務身近な具体例
都道府県・広域にわたる仕事
・広域インフラの整備
・市町村間の連絡調整
警察、都道府県立高校、二級河川・主要都道府県道の整備、医療提供体制
市区町村・住民の暮らしに直結する仕事
・身近な福祉や生活インフラ
住民票・戸籍、ゴミ収集、消防、小中学校、保育園・介護保険、市区町村道
総務省「地方公共団体の主な役割分担の現状」をもとに作成。

引っ越しや子育ての手続きで市役所・区役所に行くことが多いのは、生活に直結する仕事の大部分が「市区町村」側にあるためです。

法律でハッキリ分かれている例:警察と消防

  • 警察(都道府県):警察法により「都道府県警察(警視庁・県警など)」が置かれます。「〇〇市警察」というものはありません
  • 消防(市区町村):消防組織法により、その地域を守る責任は「市町村」にあると定められています(消防署に市の名前がついているのはこのためです)

火事は「市町村」、事件は「都道府県」と、身近な安全を守る仕事でも組織の単位が異なります。
消防の設備を47都道府県で比べたのが消防車の数が多い都道府県は?です。

1年間で使うお金(歳出)は「市区町村」のほうが大きい

広範囲をカバーする都道府県のほうが予算規模も大きく見えますが、実際に使われている1年間の支出(歳出)を比べると逆の結果になります。

全国自治体の年間歳出額比較(2022年)

自治体区分団体数1年間の歳出総額全体に占める割合
市区町村1,741団体67兆8,142億円52.3%(1.10倍)
都道府県47団体61兆7,395億円47.7%
合計—129兆5,538億円100.0%
総務省統計局「社会・人口統計体系(都道府県データ 基礎データ)」(歳出は2022年、市町村数は2024年)をもとに当サイトで集計。

全国の合計では、市区町村の歳出額が都道府県の1.10倍と上回っています。

医療・福祉・保育・小中学校など、「人口(ひとりひとりの生活)の数だけダイレクトにお金がかかる仕事」が市区町村側に集中していることが大きな理由です。

広い範囲を受け持つほうが大きい、とは限りませんでした。数えているのが「範囲」ではなく「人の暮らし」だからです。

地方別で見る歳出額と「市町村数」の違い

地方ごとにまとめて見ても、7つの地域で市町村の歳出額が県を上回っています。
また、1つの県の中に存在する「市町村の数」も地域によって大きな開きがあります。

地方県数都道府県の歳出市区町村の歳出倍率(市町村÷県)市町村数
北海道13兆585億円3兆9,393億円1.29倍179
九州・沖縄87兆7,871億円9兆121億円1.16倍274
中国53兆6,779億円4兆2,359億円1.15倍107
近畿710兆4,399億円11兆9,200億円1.14倍227
中部99兆8,495億円11兆61億円1.12倍316
関東719兆3,580億円20兆1,300億円1.04倍316
東北65兆3,410億円5兆4,499億円1.02倍227
四国42兆2,278億円2兆1,209億円0.95倍95
総務省統計局「社会・人口統計体系(都道府県データ 基礎データ)」をもとに当サイトで集計。

全国で最多の市町村数を抱えるのは北海道(179市町村)で、最も少ない富山県(15市町村)とは11.9倍もの差があります。
県が取りまとめるべき「市町村の数」も地域ごとにまったく異なります。

地方の単位でも、市町村の数は関東の316から四国の95まで開きます。
市・町・村という区分そのもののちがいは市・町・村は何が違う?に書きました。

役割はきれいに分かれているわけではない

ここまで分けて書きましたが、実際には線引きがはっきりしない部分もあります。

福祉や防災のように、都道府県と市区町村が一緒に進める分野は少なくありません。
災害のときに県と市が両方出てくるのは、どちらにも役割があるからです。

また、同じ「市」でも権限が同じとは限りません。
政令指定都市は、県がやっていた仕事の一部を引き受けます(政令指定都市とは?)。
東京23区は「特別区」で、上下水道や消防は東京都がまとめて行います(都・道・府・県は何が違うのか)。

【一覧表】47都道府県の歳出額&市町村数比較

都道府県ごとに「県」と「市町村」の支出比率をランキングにしました。
市町村÷県の比が大きい順です。

順位都道府県県の歳出市町村の歳出倍率(市町村÷県)市町村数地方
1神奈川県2兆4,926億円4兆5,089億円1.81倍33関東
2福岡県2兆2,031億円3兆1,456億円1.43倍60九州・沖縄
3埼玉県2兆2,372億円3兆357億円1.36倍63関東
4岡山県7,890億円1兆538億円1.34倍27中国
5広島県1兆1,937億円1兆5,905億円1.33倍23中国
6京都府1兆1,557億円1兆5,396億円1.33倍26近畿
7北海道3兆585億円3兆9,393億円1.29倍179北海道
8静岡県1兆3,592億円1兆7,390億円1.28倍35中部
9愛知県2兆8,493億円3兆6,132億円1.27倍54中部
10宮城県1兆978億円1兆3,557億円1.23倍35東北
11千葉県2兆2,046億円2兆7,199億円1.23倍54関東
12大阪府3兆8,953億円4兆7,625億円1.22倍43近畿
13熊本県9,783億円1兆1,372億円1.16倍45九州・沖縄
14鹿児島県9,215億円1兆631億円1.15倍43九州・沖縄
15新潟県1兆1,661億円1兆3,136億円1.13倍30中部
16奈良県5,946億円6,502億円1.09倍39近畿
17長崎県7,863億円8,534億円1.09倍21九州・沖縄
18茨城県1兆3,095億円1兆4,120億円1.08倍44関東
19兵庫県2兆6,482億円2兆8,549億円1.08倍41近畿
20三重県8,298億円8,684億円1.05倍29近畿
21青森県7,706億円8,061億円1.05倍40東北
22岐阜県9,614億円1兆37億円1.04倍42中部
23石川県6,239億円6,505億円1.04倍19中部
24長野県1兆1,564億円1兆2,030億円1.04倍77中部
25沖縄県9,122億円9,437億円1.03倍41九州・沖縄
26高知県4,835億円4,997億円1.03倍34四国
27愛媛県7,074億円7,185億円1.02倍20四国
28滋賀県6,790億円6,834億円1.01倍19近畿
29宮崎県6,905億円6,867億円0.99倍26九州・沖縄
30鳥取県3,834億円3,789億円0.99倍19中国
31群馬県9,458億円9,338億円0.99倍35関東
32香川県5,013億円4,924億円0.98倍17四国
33秋田県6,392億円6,265億円0.98倍25東北
34岩手県8,247億円8,023億円0.97倍33東北
35山口県7,478億円7,256億円0.97倍19中国
36山形県7,018億円6,780億円0.97倍35東北
37栃木県9,799億円9,384億円0.96倍25関東
38大分県6,994億円6,433億円0.92倍18九州・沖縄
39佐賀県5,958億円5,392億円0.91倍20九州・沖縄
40福島県1兆3,068億円1兆1,812億円0.90倍59東北
41和歌山県6,372億円5,609億円0.88倍30近畿
42福井県5,359億円4,690億円0.88倍17中部
43島根県5,640億円4,873億円0.86倍19中国
44富山県6,142億円5,237億円0.85倍15中部
45山梨県5,830億円4,904億円0.84倍27中部
46徳島県5,356億円4,104億円0.77倍24四国
47東京都9兆1,883億円6兆5,815億円0.72倍62関東
総務省統計局「社会・人口統計体系(都道府県データ 基礎データ)」(歳出は2022年、市町村数は2024年)をもとに当サイトで作成。

上位には「政令指定都市」を抱える大都市圏の県がズラリと並びます。
市側に大きな権限と財源が移っているためです。

一方、最下位の東京都(0.72倍)は、東京23区(特別区)の存在により、消防や上下水道などの事業を都が一括管理しているため「都の歳出」のほうが大きくなっています。

小中学校は市町村が設置します。
その幼稚園版にあたる動きを追ったのが幼稚園の数は10年で3分の1減った?です。

よくある疑問(FAQ)

都道府県と市区町村では、どちらのほうが「偉い(立場が上)」のですか?

上下(主従)関係ではありません。
対等な関係です。

地方自治法において、両者は「普通地方公共団体」という対等な立場の区分に置かれています。
上下関係ではなく「役割分担(担当範囲)」が異なる対等な組織です。

「区」には2種類あると聞きましたが?

「特別区(東京23区)」と「行政区(政令指定都市の区)」の2種類があります。

  • 特別区(東京23区):区長や区議会議員を選挙で選ぶ、市町村に準ずる独立した自治体です
  • 行政区(横浜市〇〇区、大阪市〇〇区など):政令指定都市の内部で行政事務を効率化するために設置された区切りであり、独立した自治体ではありません
引っ越しの手続きは、県と市のどちらでするのですか?

市区町村の窓口です。

住民票も戸籍も市区町村が扱っています。
県庁に行く用事は、日常ではあまり出てきません。
県の仕事は、免許や県立高校のように、場面が限られたところで出てきます。

市町村の歳出のほうが大きいのは、全国どこでもそうですか?

いいえ。
47のうち28都道府県だけです。

残りの19県では、県の歳出のほうが大きくなっています。
全国の合計では市町村側が上回りますが、県ごとに見ると分かれます。

まとめ

  • 市区町村が住民生活の基本(基礎的自治体)、都道府県は広域調整や大規模事業(広域的自治体)を担当
  • 警察は「都道府県」、消防は「市町村」と法律で分担されている
  • 1年間の歳出総額は市区町村(67兆8,142億円)のほうが都道府県(61兆7,395億円)より大きい(1.10倍)
  • ただし県ごとに見ると、市町村側が上回るのは47のうち28
  • 都道府県と市区町村に上下関係はなく、対等な関係である

日常の手続きでは市区町村にお世話になることが多いですが、両者がそれぞれの役割を分担・連携することで、私たちの地域生活が成り立っています。

出典

  • 歳出の合計、市町村÷県の比、地方ごとの集計は、上記の公表値をもとに当サイトで計算した

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