この記事では、パン屋の多さを人口あたりで47都道府県を比べます。
使うのは令和3年経済センサス-活動調査で、パン小売業に分類された事業所は全国で5,666店でした。
人口10万人あたりでは4.51店。
上位には西日本の県が並びましたが、パンをよく買う県とは重なりませんでした。
47都道府県の単純平均
4.6店
人口10万人あたり店舗数(令和3年(2021年6月1日現在))
最も多い 鳥取県
7.3店
最も少ない 和歌山県
2.5店
人口あたりのパン屋が多い5県
人口10万人あたりのパン屋が多い上位5県です。
鳥取県は7.29店、愛媛県は6.59店、富山県は6.34店、長崎県は6.17店、徳島県は6.04店でした。
鳥取県の7.29店は全国平均4.51店の1.62倍にあたります。
6位以下は福岡県5.91店、京都府5.86店、香川県5.84店、佐賀県5.83店と続きます。
上位10県のうち8県が西日本です。
地方別でも四国4県が5.82店で最も多く、北海道5.81店、中国5県5.46店、九州8県4.95店と続きました。
パンをよく買う県と、パン屋が多い県は違う
数字を並べるところまでが統計の仕事で、ここから先は解釈になります。
人口あたりで見るパン屋の分布について、ほかの指標と突き合わせて立てた推測を書きます。
事実として確かめたものではありません。
パン屋が多い県ではパンがよく買われている、と考えたくなります。
ところがそうとは言い切れません。
パンへの支出を比べた記事では、1位は兵庫県の41,967円、2位は京都府の39,347円、3位は大阪府の39,198円でした。
この3府県の人口あたりパン屋の順位は、兵庫県が18位、京都府が7位、大阪府が30位です。
人口10万人あたりのパン屋の数とパンへの年間支出の相関係数はプラス0.28。
同じ方向を向いてはいますが、関係は弱いという水準です。
パンをよく買う県が、必ずしもパン屋の多い県にはなっていません。
支出の多くはスーパーやコンビニで売られる袋入りのパンによるもので、そちらは店舗数には表れないためだと考えられます。
下位を見ると、東北6県が3.47店で8地方のなかで最も少なくなっています。
青森県3.19店、秋田県3.17店、山形県3.22店、岩手県3.43店。
米どころだからという説明が思い浮かびます。
ただ、この説明はうまくいきません。
3位の富山県6.34店は、農業産出額に占める米の割合が77.8パーセントで全国1位の県です。
日本一の米どころが、パン屋の多さでも上位に入っています。
実際、ほかの指標との相関はどれも弱いままでした。
人口密度とはマイナス0.01、持ち家住宅率とはマイナス0.18、読書の行動者率とはプラス0.03。
パン屋の多さを説明する数字は、今回のなかでは見つかりませんでした。
個人経営の店が大半を占める業種なので、その土地に店を開いて続けてきた人がどれだけいるかという、統計に表れにくい積み重ねが効いているのかもしれません。
実数で見ると大都市が並ぶ
人口あたりではなく店舗数そのもので並べると、上位は大都市を抱える都道府県になります。
東京都は716店、神奈川県は404店、大阪府は356店、福岡県は303店、北海道は301店でした。
人口あたりで1位の鳥取県は40店です。
人口あたりでは全国平均の1.62倍でも、実数としては最も小さな部類になります。
業界の規模を知りたいなら実数、家の近くにパン屋があるかどうかを知りたいなら人口あたり、という使い分けになります。
人口あたりのパン屋が少ない5県
人口10万人あたりのパン屋が少ない下位5県です。
和歌山県は2.52店、沖縄県は3.00店、岐阜県は3.01店、秋田県は3.17店、青森県は3.19店でした。
鳥取県の7.29店とは2.89倍の差があります。
最下位の和歌山県2.52店は、47都道府県で唯一3店を下回りました。
1位の鳥取県と比べると3分の1近くまで下がります。
下位に並んだのは東北の3県と、岐阜県、和歌山県、沖縄県です。
東北6県はいずれも4店を下回っており、宮城県の4.19店が最も多い数字でした。
岐阜県3.01店が下位に入っているのは意外に見えるかもしれません。
隣の愛知県も3.58店で40位。
東海地方はパン屋が少ない地域だということになります。
地方別に見るパン屋の多さ
地方別に平均を出すと、西日本と北海道が上位に来ます。
最も多いのは四国4県の5.82店です。
次いで北海道が5.81店、中国5県が5.46店、九州8県が4.95店と続きます。
少ないほうは関東7都県が4.30店、近畿7府県が4.23店、中部9県が4.17店、東北6県が3.47店でした。
四国と東北では1.68倍の差があります。
近畿7府県が4.23店と下位に来るのは意外です。
パンへの支出では兵庫県が全国1位、京都府が2位、大阪府が3位と上位を占める地方ですが、パン屋の数では全国平均を下回りました。
地図で見る人口10万人あたりのパン屋
| 項目 | 人口10万人あたり店舗数 |
|---|---|
| 北海道 | 5.8店 |
| 青森県 | 3.2店 |
| 岩手県 | 3.4店 |
| 宮城県 | 4.2店 |
| 秋田県 | 3.2店 |
| 山形県 | 3.2店 |
| 福島県 | 3.6店 |
| 茨城県 | 3.8店 |
| 栃木県 | 5.0店 |
| 群馬県 | 4.2店 |
| 埼玉県 | 4.0店 |
| 千葉県 | 3.8店 |
| 東京都 | 5.1店 |
| 神奈川県 | 4.4店 |
| 新潟県 | 4.0店 |
| 富山県 | 6.3店 |
| 石川県 | 5.1店 |
| 福井県 | 3.8店 |
| 山梨県 | 3.6店 |
| 長野県 | 4.1店 |
| 岐阜県 | 3.0店 |
| 静岡県 | 4.0店 |
| 愛知県 | 3.6店 |
| 三重県 | 4.3店 |
| 滋賀県 | 4.1店 |
| 京都府 | 5.9店 |
| 大阪府 | 4.0店 |
| 兵庫県 | 4.9店 |
| 奈良県 | 3.9店 |
| 和歌山県 | 2.5店 |
| 鳥取県 | 7.3店 |
| 島根県 | 4.1店 |
| 岡山県 | 5.5店 |
| 広島県 | 5.0店 |
| 山口県 | 5.4店 |
| 徳島県 | 6.0店 |
| 香川県 | 5.8店 |
| 愛媛県 | 6.6店 |
| 高知県 | 4.8店 |
| 福岡県 | 5.9店 |
| 佐賀県 | 5.8店 |
| 長崎県 | 6.2店 |
| 熊本県 | 4.5店 |
| 大分県 | 5.7店 |
| 宮崎県 | 4.2店 |
| 鹿児島県 | 4.4店 |
| 沖縄県 | 3店 |
日本地図で見ると、色が濃く出るのは山陰と四国、九州の西側、それに北陸の一部です。
淡いのは東北と東海、紀伊半島でした。
47都道府県の単純平均は4.56店、中央値は4.20店です。
平均が中央値より0.36店高いのは、上位の県が全体を引き上げているためです。
平均を超えたのは19県。
最も多い鳥取県でも7.29店で、人口10万人あたり7店を超えたのは1県だけでした。
| 順位 | 都道府県 | 人口10万人あたり店舗数(店) | 地方 | 店舗数 | パンへの年間支出 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 鳥取県 | 7.29 | 中国 | 40 | 32853 |
| 2 | 愛媛県 | 6.59 | 四国 | 87 | 34826 |
| 3 | 富山県 | 6.34 | 中部 | 65 | 35620 |
| 4 | 長崎県 | 6.17 | 九州 | 80 | 35367 |
| 5 | 徳島県 | 6.04 | 四国 | 43 | 36323 |
| 6 | 福岡県 | 5.91 | 九州 | 303 | 33647 |
| 7 | 京都府 | 5.86 | 近畿 | 150 | 39347 |
| 8 | 香川県 | 5.84 | 四国 | 55 | 36291 |
| 9 | 佐賀県 | 5.83 | 九州 | 47 | 32034 |
| 10 | 北海道 | 5.81 | 北海道 | 301 | 29323 |
| 11 | 大分県 | 5.66 | 九州 | 63 | 30441 |
| 12 | 岡山県 | 5.54 | 中国 | 104 | 37393 |
| 13 | 山口県 | 5.35 | 中国 | 71 | 33345 |
| 14 | 東京都 | 5.11 | 関東 | 716 | 37737 |
| 15 | 石川県 | 5.07 | 中部 | 57 | 36236 |
| 16 | 広島県 | 5.04 | 中国 | 140 | 38080 |
| 17 | 栃木県 | 4.95 | 関東 | 95 | 32304 |
| 18 | 兵庫県 | 4.88 | 近畿 | 265 | 41967 |
| 19 | 高知県 | 4.82 | 四国 | 33 | 32798 |
| 20 | 熊本県 | 4.46 | 九州 | 77 | 30990 |
| 21 | 鹿児島県 | 4.44 | 九州 | 70 | 31910 |
| 22 | 神奈川県 | 4.37 | 関東 | 404 | 35282 |
| 23 | 三重県 | 4.33 | 近畿 | 76 | 34643 |
| 24 | 群馬県 | 4.2 | 関東 | 81 | 33075 |
| 25 | 宮城県 | 4.19 | 東北 | 96 | 31443 |
| 26 | 宮崎県 | 4.15 | 九州 | 44 | 30571 |
| 27 | 長野県 | 4.13 | 中部 | 84 | 32033 |
| 28 | 滋賀県 | 4.11 | 近畿 | 58 | 37850 |
| 29 | 島根県 | 4.06 | 中国 | 27 | 33253 |
| 30 | 新潟県 | 4.04 | 中部 | 88 | 35713 |
| 30 | 大阪府 | 4.04 | 近畿 | 356 | 39198 |
| 32 | 静岡県 | 3.96 | 中部 | 143 | 32419 |
| 33 | 埼玉県 | 3.95 | 関東 | 290 | 38856 |
| 34 | 奈良県 | 3.88 | 近畿 | 51 | 37517 |
| 35 | 福井県 | 3.82 | 中部 | 29 | 33964 |
| 36 | 千葉県 | 3.76 | 関東 | 236 | 35459 |
| 37 | 茨城県 | 3.75 | 関東 | 107 | 29783 |
| 38 | 福島県 | 3.64 | 東北 | 66 | 29666 |
| 39 | 山梨県 | 3.6 | 中部 | 29 | 30744 |
| 40 | 愛知県 | 3.58 | 中部 | 269 | 37029 |
| 41 | 岩手県 | 3.43 | 東北 | 41 | 28861 |
| 42 | 山形県 | 3.22 | 東北 | 34 | 27965 |
| 43 | 青森県 | 3.19 | 東北 | 39 | 29292 |
| 44 | 秋田県 | 3.17 | 東北 | 30 | 26785 |
| 45 | 岐阜県 | 3.01 | 中部 | 59 | 33436 |
| 46 | 沖縄県 | 3.0 | 九州 | 44 | 28700 |
| 47 | 和歌山県 | 2.52 | 近畿 | 23 | 36188 |
このグラフについての豆知識
店内で焼く店とそうでない店の両方を数えている
この記事の店舗数は、産業細分類「5863 パン小売業(製造小売)」と「5864 パン小売業(製造小売でないもの)」の合計です。
全国で5,172店と494店、あわせて5,666店でした。
製造小売は自分の店で焼いて売る、いわゆるベーカリーです。
数のうえでは9割以上を占めます。
スーパーやコンビニのパン売り場は含まれません。
またパンを主に扱っていても、菓子のほうが売上が大きければ菓子小売業に分類されます。
パン屋は個人経営が多い業種
菓子・パン小売業全体では全国48,289店あり、そのうちパン小売業は5,666店です。
残りの多くは菓子小売業でした。
パン屋は小規模な店が多く、チェーン展開よりも個人経営が中心の業種です。
そのぶん、その土地に何店あるかは大手の出店戦略ではなく、開業する人の数に左右されやすくなります。
経済センサス-活動調査は5年ごとに行われ、この記事の数字は2021年6月1日現在のものです。
人口10万人あたりの店舗数は、2021年10月1日現在の人口推計で割って算出しました。
順位の並びがにている記事
同じ形の地図になる記事はあるでしょうか。
人口あたりで見るパン屋の順位で探してみます。
0.62という高い相関を示したのが【医師の数を人口で割ると?】人口10万人あたり医師数、高齢化が進んだ県ほど多いわけではないでした。
逆に、ほぼ裏返しの並びになったのが【まぐろへの支出】平均年4,471円、差は8.5倍にひらく(相関-0.53)でした。
これは並びが近いというだけで、片方がもう片方を生んでいるという意味ではありません。
地図を2枚ならべてみてください。
地方のなかで見た人口10万人あたり店舗数
| 地方 | 最も多い(店) | 最も少ない(店) |
|---|---|---|
| 東北 | 宮城県 4.19 | 秋田県 3.17 |
| 関東 | 東京都 5.11 | 茨城県 3.75 |
| 中部 | 富山県 6.34 | 岐阜県 3.01 |
| 近畿 | 京都府 5.86 | 和歌山県 2.52 |
| 中国 | 鳥取県 7.29 | 島根県 4.06 |
| 四国 | 愛媛県 6.59 | 高知県 4.82 |
| 九州 | 長崎県 6.17 | 沖縄県 3.0 |
まとめ
47都道府県の人口10万人あたりのパン屋の数を比べると、最も多い鳥取県は7.29店、最も少ない和歌山県は2.52店で、その差は2.89倍でした。
全国では4.51店、店舗数は5,666店です。
この人口あたりで見るパン屋の数字には、読み違えやすい点が3つあります。
1つ目は、スーパーやコンビニのパン売り場が含まれないこと。
2つ目は、人口あたりの数を2021年10月1日の人口推計で算出していること。
3つ目は2021年6月1日現在の調査であることです。
パンへの支出で全国1位の兵庫県は、人口あたりのパン屋では18位。
支出との相関係数はプラス0.28にとどまりました。
米どころだからパン屋が少ない、という説明も成り立ちません。
米の割合が全国1位の富山県は、パン屋の多さでも3位でした。
パンへの支出や喫茶店の数を比べた記事とあわせて読むと、その違いが見えてきます。
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出典
- 統計名: 経済センサス-活動調査(卸売業、小売業に関する集計)と人口推計
- 調査年: 令和3年(2021年6月1日現在)
- 公開元: 総務省・経済産業省/総務省統計局
- 参照URL: https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040032857
- 備考: 事業所数は産業細分類5863_パン小売業(製造小売)と5864_パン小売業(製造小売でないもの)の合計。店内で焼くベーカリーが中心で、スーパーやコンビニのパン売り場は含まない。パンへの年間支出は家計調査による。人口10万人あたりの店舗数は、2021年10月1日現在の人口推計で割って算出した
注記: 事業所数は産業細分類5863_パン小売業(製造小売)と5864_パン小売業(製造小売でないもの)の合計。
店内で焼くベーカリーが中心で、スーパーやコンビニのパン売り場は含まない。
パンへの年間支出は家計調査による。
人口10万人あたりの店舗数は、2021年10月1日現在の人口推計で割って算出した
